「服は生地からできている」というmù_(ムー)のコンセプトは、デザイナー木村の前身ブランドであるLOOPÉ(ルーペ)から引き継いだものになる。
それは20年以上服作りに携わり、国内の生地屋や縫製工場に足しげく訪れ、日本の職人との深いパイプを築き上げてきた木村の「生地から考えることで理想の洋服に近づける」という服作りへの姿勢が一貫して変わらないということを意味している。
LOOPÉで好評だったEASY TROUSERS(イージートラウザース)をアップデートし、mù_のデビューアイテムに選んだのも、木村の服作りに対する思いが変わらないからであり、このアイテムこそがmù_の基準となるものだからである。
-ブランドのデビューアイテムのひとつにLOOPÉで展開していたアイテムを選んだ理由は?
木村:ブランドが変われど、 “着る人によって同じ洋服でも見え方が違う”っていうイメージが常に自分の中にあって、その基本というか基準になるのが、このEASY TROUSERSなんです。
LOOPÉをスタートするときにこの生地を見つけて、EASY TROUSERSを作ったんですが、履く人の雰囲気や好み、コーディネートで全然違う表情を見せることができるようにディテールやシルエットはすごく細かいところまでこだわりました。
その甲斐もあってか、LOOPÉではたくさんのお客様に共感していただき、最も人気のあるアイテムになりました。
今回mù_を始めるにあたって、LOOPÉでは出来なかった生地の加工など、ちょっと実験的なアイテムもやりたいと考えてはいるのですが、最初のアイテムをそういったものではなく、EASY TROUSERSを選んだというのは、ブランドの基準となるのはこのパンツですよという意味でもあります。
-生地について
木村:LOOPÉの時と同じ生地で、TC(ポリエステルとコットン素材を混紡した生地)にニドムバイオという加工を施したものになります。TCはハリコシがあって、丈夫な生地なんですが、生地の段階でこの加工をすることで、滑らかなドレープ性とソフトな風合いが生まれるんです。
ソフトな生地を使いたいなと思って探していたところで、生地屋さんに加工テストをしたサンプルをいくつか見せてもらって、その中でこの生地を見つけてイメージが湧きました。
TCというワークアイテムにも使われる生地なのに、ちょっとウールのようで、テーラードっぽくも見えるなと。
これは着る人で見え方が変わるっていう自分のイメージに合うなと思いました。
-改めてEASY TROUSERSの特徴は?
木村:TCの持っているラフに履けるっていうイージーパンツの要素と、この生地を見た時に僕が感じたドレスっぽいなっていう要素の両方を併せ持ったアイテムですね。
いくらドレスっぽく見えたからと言っても、そのままイージーパンツを作ってしまったら、ただカジュアルなアイテムになってしまう。
そこで、あえて前立て部分にステッチを入れたり、ドローコードを同じ生地にしたり、タックの入れ方だったりで、スラックスのようなフォーマルな雰囲気をプラスしました。裾も一度折り返して履いた際に、縫い目が見えないようにしています。
ただ、ヒップや、ワタリなんかにはたっぷり生地をとってあるので、履き心地はあくまでもイージーパンツなんです。
我々のスタッフもみんな持っていますが、それぞれの雰囲気によって全然表情が変わりますね。
同じものを履いてお店に立っていても気にならないというか、それぞれが好きに合わせてるので、結局その人っぽくなっている感じですね。
人だけでなく、コーディネートでも雰囲気が変わります。
トップスはもちろんですが、合わせる靴を変えるだけでも大きく印象を変えてくれるので、そこも魅力だと思います。
-シルエットへのこだわりは?
木村:この生地のドレープをどう活かすかをすごく考えました。ソフトな風合いである分、だらしなく見えてしまったりもするので、立体的なフォルムの中に流れるドレープ感が出るよう、タックの位置、深さ、角度にはこだわりました。
大人が着られる上品なオーバーサイズというのを意識したので、ルーズになりすぎず、適度なリラックス感のあるシルエットになったと思います。
-今回アップデートした部分
木村:LOOPÉのEASY TROUSERSは僕も気に入っていて普段からよく履いているんですが、ウエストが少し大きかったかなと。
というのも、履いてるうちに少し落ちてしまう感じがあって、それを修正しようと思いました。
ただこれも単純にウエストを小さくしようとすると、シルエットを変える必要が出てしまい、ヒップも含めて全体がタイトになってしまいます。タイトになれば当然ドレープが失われて、このパンツの良さが消えてしまう。
そこで、サイドにもう一本タックを追加し、ウエスト部分だけを小さくし、ヒップ部分の生地の分量は変えないようにしました。
これにより、シルエットやドレープはそのまま残したうえで、ウエスト部分に少し引っ掛かりが生まれ、落ちづらくなりました。
シルエットを変えないように、このタックの位置や深さ、角度はかなり緻密に計算しています。
-新色のチャコールについて
木村:杢調のグレーが、よりウールらしさを強調できるので選びました。スラックスのような雰囲気で気に入っています。
-mù_というブランドにおけるEASY TROUSERSの位置づけ
木村:我々の服は着る人によって完成させてほしいという思いが根底にあります。
このEASY TROUSERSは、まさに着る人によってカジュアルにもドレスにもなりうるアイテムです。いい意味でどちらにも振れていないというか。
今後出していくアイテムも色々なアイデアがたくさんあるのですが、ブランドの基準としてこのEASY TROUSERSがあることで、そこから枝葉のようにつながりを持たせていくことができると思っています。
EASY TROUSERS
colour:GRAYISH BROWN/CHARCOAL/BLACK
size:S/M/L/XL
price:¥26,400
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EASY TROUSERS GRAYISH BROWN
EASY TROUSERS CHARCOAL
EASY TROUSERS BLACK