ブランドがスタートする前から、木村の頭の中にずっとしまい込まれていたアイデアがあった。
それが「ブート」だ。
古着屋で見かける、精巧なのか雑なのかよくわからない偽物のTシャツ。バンドのライブグッズに混じった非公式のプリントもの。
偽物が存在するということは、本物がそれだけ誰かに羨まれ、リスペクトされているということだ。
木村はそこにある種の憧れを感じてきた。
mù_はまだ規模の小さいブランド。今の状況で偽物が出回るかといえば、誰も作ってくれない。
であれば、自分たちで作ってしまえ。
そんな発想から生まれたのが、今回のポップアップイベントでひっそりと古着に紛れ込むアンオフィシャルなアイテムだ。
-このアイデア、いつ頃からあったのか?
木村:ブランドをスタートする前からです。
フリーマーケットに参加して、その中に偽物を紛れ込ませるっていう構想はあったんですけど、何をしたら一番面白いんだろうっていうところがなかなか繋がらなくて。
-今回のポップアップイベントがそのきっかけになった?
木村:そうです。
4月24日から26日の3日間、うちの実店舗の地下1階で「ファッション一郎」の古着のポップアップイベントをやることになって。
そのときにずっと温めていたこのアイデアと繋がったんです。古着の中にブートが紛れ込んでるっていう、古着屋でよく見る光景を自分たちで演出できるなと。
ようやく引き出しを開けられるって感じでした。
-なぜ「偽物」にこだわるんでしょう?
木村:偽物が作られるって、それだけ本物がすごいことになってる証拠だと思うんです。
誰も知らないものの偽物は作らない。バンドのTシャツでも有名ブランドでも、偽物が出回るってことはそこへのリスペクトがある。
うちのブランドはまだそこまで達していないので、であれば自分たちで作ってしまおうと。
ちょっと情けない嫉妬心も含めて、いつかそうなりたいっていう希望も込めて。

-アイテムの作り方もあえて変えてるんですか?
木村:そうです。
うちのブランドって生地の選定からパターンも一から作るのが基本なんですけど、今回はあえてその真逆で。
よくライブグッズなんかで見るような市販のボディにプリントするっていう作り方にしています。プリントの入れ方もあえて一回刷りにして、ちょっとムラになるようにして。
素人が版を作って刷りましたみたいな雰囲気を出したくて。
-アートワークのこだわりも聞かせてください。
木村:自分が絶対やらないことをやる、というのが基準で。
カタカナで「ム」を使ったり、「TOKYO JAPAN」を入れたり。僕がデザインするときには絶対使わない表現なんです。
でも、それがブートっぽい絶妙なダサさになる。自分は好きだけど、このブランドの中には入れないものを意図的に詰め込んでる感じですね。
-これは本物なんですか、偽物なんですか?
木村:僕の中では偽物です。だからといって偽物だから買わないでくださいってわけではなくて。
ただ、うちのお客様が買っていただいて、次にお店に来た時には、僕らは「これ偽物ですよ。」って言う。
でも、同じデザイナーがデザインしてるんですけどね。意味がわからないですよね。

-このアイテムはお店で売らないんですよね?
木村::売りません。それをやってしまうとアンオフィシャルではなくなるので。
今回のポップアップ会場の古着の中にひっそり混じっているっていう状況じゃないと意味がない。スタッフにも、プライベートで着るのはいいけど、お店では着ないでって言ってます。
そのストーリーごと大事にしたいので。
ライフスタイルを通して洋服の魅力をお届けしていきます。