白いシャツを、黒く染めた。<br>フォーマルウェアの古着感という矛盾を設計すること。

白いシャツを、黒く染めた。
フォーマルウェアの古着感という矛盾を設計すること。

古着屋で見かけることがある。
フォーマルなシャツが、くたびれた雰囲気で棚に並んでいる。
結婚式に着てくような白いシャツが、長年の使用によって少し違う表情を持つようになったもの。それが不思議と、かっこよく見えることがある。

木村はずっとその感覚が頭にあった。フォーマルウェアが時間をかけてカジュアルに変化していく、その過程にある面白さ。

ただ、その雰囲気を「新品で作る」とはどういうことか。
木村の答えは、リアルに再現することではなかった。古着の色落ちをそのまま模倣するのではなく、別の出発点から、同じ雰囲気に辿り着く。
そこに木村が面白いと思う理由がある。

夏場にかけて上品な雰囲気を意識してたアイテムを出してきたが、ここから少し崩し始める。
その起点として選ばれたのが、フォーマルとカジュアルが混在するこのシャツだった。

フォーマルウェアの古着感。矛盾しているように聞こえる。
でもその矛盾こそが木村のアイデアの独自性なのである。

 

-今回のシャツには、ストーリーが設計されているそうですね。

木村:そうですね。自分の中でのストーリーとしては、

「もともとパーティーに行ったり、結婚式で着るために買った白いシャツがあって。もう着る出番がなくなってしまった。
でも捨てるのは忍びないし、どうしようと思って、一度自分で染めて普段着として着られるように黒にしてみようと思ったら、それが失敗した。」

そんな雰囲気をこのシャツに設計しています。

なので、黒が綺麗に均一に染まっているのではなくて、自分で染めたことによってムラになってしまって、うまく染まらなかったという雰囲気を作っている。
そのパッカリングだったりムラ感という表情が、このシャツの特徴になってきます。

BOTCHED DYE WING COLLAR SHIRT | mù_

 

-古着の色落ちとは逆の発想だと聞きました。

木村:古着が着こまれてどんどん色が褪せていくのに対して、これは色を乗せたけど失敗してしまったという感じでムラ感を作っています。

パッと見は分からないと思うんですけど、色が落ちてムラ感が出た古着の雰囲気を、逆に色を染めるときの工夫で表現している所に自分の小さいこだわりがあります。
あえて均一に染めないテクニックを使っているんですが、それは簡単ではなくて、コントロールも難しい。

ヴィンテージ感を出すのによく使われる色の落ちやすい染料ではなく、あえて一般的な色の定着しやすい染料で染めている。
それを綺麗に染まらないように、機械を使ってはいるんですが、職人にコントロールしてもらってます。

手間のかかる作業ではあるんですけど、それによって1点1点ムラの出方も若干個体差がでて、狙った雰囲気になりました。

 

-それはリアルに古着を再現しようということとは違うんですか?

木村:見た目は変わらないかもしれません。ただ、前回のオーダーのデニムでいえば、リメイクに見えるけど実は刺繍だったというのと、考え方としては同じところにある。

古着で色が褪せたように見えるけど、実はその逆で染めが失敗した雰囲気の中で、ただ着た時の定義としてはちょっと古着っぽいシャツだなってなる。

小さいこだわりとしては染めが失敗したというようなストーリーであったりとか、何かカジュアルなものの中に少しフォーマルっぽい要素を入れるとか、フォーマルっぽい見え方をするんだけど着た時に何かカジュアル感があるなというような、着る人や合わせるものによって雰囲気が変わるっていうのは、自分の中でよく考えることです。

BOTCHED DYE WING COLLAR SHIRT | mù_

 

-フォーマルっぽい要素というのは?

木村:ジャケットを作った時と考え方は一緒です。

自分の中ではラペルが付いていればジャケットでしょっていうのと一緒で、ウィングカラーのシャツ=フォーマルでしょというような。そういうところが面白いと思っていて。

ウィングカラーというのは立ち衿の先に小さな羽のような折り返しがついた形状で、本来であれば蝶ネクタイをしたり、フォーマルな時に用いられるものです。
それを入れることによって形はフォーマルな感じではあるんだけど、それ以外の素材と染めのテクニックで、ラフで力の抜けたような雰囲気というのを作っている。

自分が考えたストーリーを設計するにあたって、元のシャツがフォーマルなものだったという文脈が必要で。その文脈を衿一つで担保している。
素材と染めはラフな方向に振りながら、衿だけがフォーマルの名残として残っている。それがこのシャツの面白さだと思っています。

 

-直近で出していたアイテムと少し雰囲気が違う

木村:今年の夏から秋口に向けて、きれいめなものを作りながら、上品な印象を与えるアイテムをずっと揃えてきていたんですけど。

このシャツを皮切りに、その上品な綺麗というところと合わせやすい中で、どんどんアイテムを崩していくようなことをしたいなと思って。
むしろそっちで、綺麗だったものがどんどん崩れていくというか、崩していくような雰囲気になってくるかなと。

全体的に加工を入れたものとか、少し古びた感じのあるようなものを合わせても、コーディネートとしてはその先としては成立するけど、自分がやりたいのは、今まで少し上品に抑えていた部分をコーディネートでどんどん崩していくというような雰囲気のものを、今後は加工だったりとかデザインで加えていきたいなというふうに思っています。

 

-細部のこだわりも聞かせてください。

木村:ボタンは天然の白の貝ボタンを使っているんですけども、染める中でおそらく若干染料が入っていて若干変化している。
狙ったというよりも、そのまま染めているから色が入ってしまった感じです。

この貝ボタンというのもドレスで使われるような天然の素材を使っている。そこにもフォーマルの要素を少しだけいれています。
白を使っているのは、もともとのシャツがフォーマルの白いシャツだったという名残を残すためです。

それとヨークの内側にはうちの白いシャツと一緒で黒の刺繍でロゴを入れています。
黒いシャツに黒い刺繍なんでほとんど見えないんですけど、さっき言った染めのムラだったり、陰影によって実はここにロゴがうっすら入ってる。
本当に気づく人しか気づかないぐらいの雰囲気なんですけど。

このロゴはスポーティーな雰囲気のロゴなので、シャツを着るときはあえてそれを内側に隠して、フォーマルな着こなしをしているけど、アクティブな部分は内側に秘めていますよっていう思いを込めています。

 

botched dye wing collar shirt | mù_

BOTCHED DYE WING COLLAR SHIRT

colour:BOTCHED BLACK
size:S/M/L/XL
price:¥39,600

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