これまでmù_で展開しているパンツは、どちらかというとカジュアル要素が強いアイテムだった。
その中でもEASY TROUSERS(イージートラウザース)、PIN TUCK DENIM TROUSERS(ピンタックデニムトラウザース)は少しだけスラックスのような見え方をする要素も入れていたが、今回発売するCURVED LINE TROUSERS(カーブドライントラウザース)は最初からキレイめなスラックスを意識した、これまでとは異なる軸で作られている。
キレイめなパンツというと、かちっとしたスラックスを想像してしまいがちだが、木村のフィルターを通したそれは、あくまでもmù_の世界の中に落とし込まれており、カジュアルなイメージのあるチノパンの生地を採用し、デザインもまた一般的なスラ ックスのイメージとは一線を画す仕上がりとなっている。
一見するとシンプルに見えるけれど、その見た目からは想像できない上品で柔らかな履き心地と、立体感のあるシルエットは既存の定義には当てはまらない個性的な1着となっている。
-今回発売するCURVED LINE TROUSERS(カーブドライントラウザース)も生地から見つけた?
木村:今回は少しアプローチが違って、まずアイデアとしてブランドの中にキレイめなスラックスのようなアイテムを入れたいなというところからスタートしています。
というのもこれまでのmù_のパンツはどちらかというとカジュアルな要素が強かったので、もう一つ違う軸としてキレイな見え方をするものを作りたかったというのがあって。
なので今回は生地よりも先にデザインのアイデアからスタートしています。
これまでは生地を見つけてその生地を最大限に活かすデザインを考えるというプロセスでしたが、これに関しては生地を探すのとデザインを並行して進めていたという感じですね。
-キレイめなスラックスというとかちっとしたパンツをイメージしてしまうが、これは個性的なシルエット。
「キレイめなスラックス」の定義は?
木村:言葉にするのは難しいんですが、ひとことで言うと人体にフィットしている立体的な作り。
今回のトラウザースはカービングであったり、ワイドといった人体から離れるmù_らしいデザインを取り入れながらも、腰回りやヒップは身体の曲線に沿う作りにすることで、単純にワイドなパンツではなく綺麗に見せる様にしています。
自分の感覚になってしまうので分かりづらいかもしれないですが、例えばEASY TROUSERSはキレイめなアイテムをラフに崩してカジュアルに落とし込んだのに対して、このCURVED LINE TROUSERSはチノパンからアメカジっぽい粗野な要素をそぎ落として綺麗なものに仕上げたというイメージです。
-生地の特徴は?
木村:今回選んだ生地というのはウエストポイントというアメリカ陸軍の士官学校の制服で使用されていた生地になります。
この生地は世間一般で言うところのチノの組織と変わらないのですが、打ち込みが多く、光沢があって、非常にタフでハリコシのあるものになっています。
この上品な光沢感を活かしながらmù_らしいドレープ感を出すための加工をしました。
-どんな加工?
木村:EASY TROUSERSの生地でもやった加工なんですが、生地の段階で少し綿を解放させるような加工を施していて、更に今回はその回数を増やしています。
それによって光沢感やタフさはそのままに、綿(わた)のような柔らかさをより強調させています。
-光沢感は活かしたかった?
木村:これまでチノ素材を使うときはカジュアルなアイテムを作ることが多かったので、綿独特の粗野な感じを活かすようなことをしていたんですが、今回はアメカジのような武骨な要素を取り除きたかったので、光沢感と柔らかさというのは生地を選ぶ上で重要視したポイントになります。
-アイテム名にあるCURVED LINEというのはこの特徴的なシルエットから?
木村:そうですね。
このカーブをさせるシルエットを表現するのにワタリ幅をかなり広く取っていたり、強めのテーパードを入れていたりするんですが、今回の柔らかくした生地でそのまま作ると、膨らみではなくドレープになってしまって、オーバーサイズだったりワイドパンツの雰囲気になってしまう。
それだと自分が意図するシルエットが出ないので、より立体的な構造の中で生地を張らせるところとドレープ性を出すところを使い分けるといった、パターンの構成と細かなディテールの工夫によって、このカーブを強調させるように仕上げています。
-テーパードもかなり特徴的です
木村:裾幅自体の設定は極端に細いということではないのですが、ワタリ幅が太いので、強くテーパードしているように見えます。
過去にもこれくらいの裾幅の設定はやったことはありますが、ワタリ幅との差をここまで大きくしたのは初めてですね。
それと通常のテーパードのパンツと少し違うのはフロントに変則的につけたタックです。
腰回り、ワタリの部分も大きく生地をとっているので穿き心地は楽なんですが、 このタックによって生地がたたまれているので、そこまで大きく見せないようにしているんです。
それによって若干すっきりした腰回りから膝部分で大きく膨らみ、裾に向かってまた細くなるというカーブしたようなラインが出来上がる。
なのでテーパードと言わず、あえてCURVED LINE TROUSERSというネーミングにしています。
-変則的なタックとは?
木村:さっき言った通り、カーブを強調するためというのもあるのですが、アウトボックスプリーツを採用することで腰周りは縦に膨らむようにして、すっきり見せています。そこからワタリから膝にかけての横のふくらみと、細い裾幅という要素が相まってきれいなカーブを作り出しています。
-このカーブのラインを表現するためにほかに工夫しているところは?
木村:サイドをラップシームという袋縫いをしていて、これによって芯ができて輪郭がはっきりするのと同時に、前身頃は生地が引っ張られてハリができ、後ろは余った生地がドレープするんです。
ただ単に前から見て丸いフォルムということではなく、立体的な丸みというのをこれで表現しています。
実は僕が持っている古着で、こういう縫製をしているものがあって。
それは多分、着ていた人がサイズを変更するために自分で改造したという感じなんですが、昔からその縫製が面白いなと思っていて、いつか使えないかなと漠然と頭の中にありました。
それが今回このパンツを考えていた時に使えるなと思いました。
-これまでのEASY TROUSERSやCLOWN PANTSはドレープ性を活かすというのが 一つキーワードだったと思いますが、このアイテムは違う?
木村:違います。
もちろんブランドの中での空気感として生地の上品なドレープ性っていうのはしっかり担保する必要があります。
EASY TROUSERSの変幻自在に穿きこなせるところや、CLOWN PANTSの膨らみというのはそのドレープ性を活かすという考え方で、穿いた時に見た目にも落ち感っていうのを表現していたんだけど、今回はこのmù_というブランドの中でのスラックスというアイテムを作りたかったので、柔らかい生地ではあるけど、見た目にはあえてそのドレープ性を出さないことでキレイめなパンツというのを表現してます。
-キレイめに見せるために他に工夫しているところは?
木村:自分の中のキレイめなパンツの定義は腰回りをすっきり見せるというというのがあって、その部分は考えています。
股上は結構深めに取っているんですが、前股上と後ろ股上で差寸を付けていて、フロントのほうが低く設定してあります。
これは前から見た時に、しっかりとした腰の位置ですっきりさせる設定なんですが、そのまま後ろも同じ高さにしてしまうとダレて見えてしまうんです。
なので後ろの位置はハイウエストでしっかり収まるような高さで設定しています。
それとアウトボックスプリーツが膨らみすぎるとボリュームが出てしまうので、プリーツを抑えるような位置にベルトループを付けています。
あとは細かいところですが、普通のカジュアルパンツと比較すると運針も細かくしているので、そのあたりも少し繊細な作りにしてますね。
-「キレイめなスラックス」と言いながらも普通のスラックスではないですね
木村:そうですね。
一般的なアイテムを普通に作りたいわけではないので。
今回のパンツに限った話じゃないですが、生地、加工、デザイン、シルエットなど足し引きのバランスを考えながら、「普通このアイテムでこんなことしないよね」っていうことも結構やっています。
変わった生地を使って変わったシルエットのものを作ったり、派手な色や柄を使うのも個性だと思うんですが、このブランドで意識しているのは、シンプルに見えたり、上品に見えたりするんだけど、実は全然普通じゃないということ。
それこそが着る人のテンションが上がることにも繋がると思っています。
このパンツも一般的なチノパンの素材に見えると思いますし、サンドベージュというカラーもオーソドックスなものですが、この柔らかな履き心地は普通のチノパンとは全く違います。
それとやはりシルエットですね。
縦と横のふくらみを計算して立体的な丸みを出したシルエットは、ちょっと他にはないと思います。
CURVED LINE TROUSERS
colour:SAND BEIGE
size:S/M/L/XL
price:¥30,800
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CURVED LINE TROUSERS