mù_lab.(ムーラボ)壁面に貼られたポストカードやデザイナー木村が描いたデザイン画

木村の得意とする加工をmù_の世界の中で表現するGRAYSCALE COLLECTION

mù_というブランド名はデザイナー木村の幼少期のニックネームが由来となっているのだが、実はもう一つの意味ある。

=“ニュートラル”

「自分の仕事は塗り絵の下絵を描くようなもので、最終的な色付けはお客様の趣味・嗜好・ライフスタイルだと思っている」という木村の思いがそこには込められている。

だからこそ、職人すら驚かせる独特なアイデアと、細かい部分まで一切の妥協をしないこだわりが詰まっているのにもかかわらず、mù_のアイテムは一見するとシンプルなのである。

しかしながら一方で木村は「生地を化けさせる」ことも得意としている。

これまでも、何でもない、どこにでもあるような普通の生地を豹変させることでユニークな洋服を手掛けてきた。

その独特なアイデアと、それを実現するための加工の知識、そして何よりそのアイデアを面白がって協力してくれる職人とのつながりというのも木村の大きな武器なのである。

今回発売するGRAYSCALE COLLECTION(グレースケールコレクション)の4アイテムはそんな木村のもう一つの武器である加工が、これまでのmù_のアイテムよりも分かりやすい形で表現されている。

加工というとダメージだったり、刺繍だったりと、どこか奇抜なものをイメージしてしまいがちであるが、今回のコレクションは見た目にハードな加工を施したものではない。

これまで多くの加工の技術に触れてきた木村だからこそできる、足し引きのバランス感覚によって、あくまでもmù_の世界の中に溶け込ませることにこだわったアイテムになっており、ブランドに奥行きを与えるコレクションになっている。

 

-今回発売するGRAYSCALE COLLECTIONについて

デザイナー木村のデスクにグレースケールコレクションの商品が置かれたカラー画像

木村:もともとブランドをスタートした時から、自分が得意とする加工のアイデアを取り入れたいなと考えていて。

mù_の前身ブランドであるLOOPÉでもあまり加工モノを前面に押し出すことをしていなかったですし、それを引き継いだmù_でもこれまではあまりやってこなかったんですが、一方で自分のキャリアの中で言えば加工モノをやっていた期間のほうが長いんですね。
そう意味では、LOOPÉやこれまでのmù_でやっていた生地を活かすことと同様に、生地を加工する、化けさせるというのも得意なんです。

mù_をスタートするときはLOOPÉの世界観を踏襲することも大事だったので、その流れを汲みながらアイテムを考えましたが、今このタイミングでフラットなmù_の世界の中で抑揚をつけたいなと思い、加工モノを取り入れることにしました。

とはいえブランドの世界観から浮いてしまうような劇的な変化ではなく、あくまでもブランドの世界に馴染ませる加工感にしていて、更にそれをコレクションという集合体にすることによってmù_というブランドが、LOOPÉよりも幅の広い、奥行きのあるブランドになっていくというイメージを表現しています。

 

-アイテムは?

木村:ブルゾン、ブラックデニム、ニット、Tシャツの4アイテムになります。
そのうち、ブルゾンとTシャツはmù_lab.での展開なので、店頭のみでの販売になります。

 

-GRAYSCALEというネーミングはどこからきている?

木村:GRAYSCALEというネーミングは後付けです(笑)

少し前に初めてキービジュアルの撮影をしたんですが、その打ち合わせの時にカメラマンの方と昔の雑誌のようなイメージで、モノトーンで撮影するっていうアイデアが出て。

僕もそういう雰囲気は好きで、モノトーンの写真って見た時に色を想像させられるんですよね。
で、今回モノトーンで撮影することで、それを見た人がどんな色味かを想像する。
でも実際はカラーになっても洋服はモノトーンのままっていう、期待を裏切るじゃないですけど、そういうのが面白いかなと。
そんなことを考えている中で、GRAYSCALEという言葉が浮かんだという感じですかね。

グレースケールコレクションの商品を着用したキービジュアル画像 拝見はカラー、モデルのみモノトーンに

 

-名前の通り4アイテムすべてモノトーンを基調としているが、色味のこだわりは?

木村:グレースケールというのは白から黒までの256段階のグレーで構成されるのですが、実際に洋服においても、たとえば家にある黒いTシャツも並べてみるとすべて微妙に色が違います。
それくらい黒という色は奥が深くて、僕は黒を表現するときはその色味をすごく追及します。

今回の4アイテムは、どれも少し着古してアタリが出た雰囲気になるような加工を施していますし、コレクション全体で見た時に同じような空気感、色の表現になるようにしていて。

でもそれはすべてに同じような加工をして作っているということではなく、アイテムそれぞれ素材、糸の太さ、織り方など生地は異なっていて、そのそれぞれに合わせた加工をしているんです。
同じ空気感、色味にするにしても、アイテムごとに染料も染め方も洗い方もすべて違いますし、何度も修正をかけながら、わずかな隠し味的な部分まで計算することでGRAYSCALE COLLECTIONは成り立っています。


 

-加工モノと聞くともっとヴィンテージっぽいものを想像するが

木村:確かにヴィンテージっぽくするためのダメージやアタリ、色落ちなどは見た目にもわかりやすいので、イメージとしてはそっちに引っ張られるかもしれません。
具体的に細かく説明するのは難しいんですが、加工と一口にいっても洗いや、染め、ダメージ加工、プリントなど多岐にわたるし、それぞれに様々な手法があるんですよ。
料理で言うと、和食、中華、イタリアン、フレンチなどジャンルがたくさんあって、それぞれに様々な調理方法や技術がありますよね。
同じ素材を使ってもジャンルや調理方法によってあっさりしたものにもなるし、こってりしたものにも、見た目が派手なものにもなるじゃないですか。
加工も同じで、作りたいもののイメージでやることは全然違ってくるし、ただ古着っぽくしていく事だけが加工モノというわけではないんですよ。

 

-今回のGRAYSCALE COLLECTIONにおいて加工で意識したことは?

木村:やりすぎないことですね。

やっぱりまず前提としてmù_という世界観ありきなので。

加工をたくさん入れることでよりヴィンテージライクだったり、ハードな表情を出したりっていうのは可能だし、それはそれで嫌いではないですけど、mù_の世界観というか、いままでやってきたアイテムとの親和性がなければハレーションを起こしてブランドとして見た時に浮いてしまう。

買ってくれた人たちも色々とスタイルや好みがある中で、その人たちのライフスタイルやクローゼットにそっと馴染む服っていうのを目指していたりもするので、あまりやりすぎてしまうとそういうブランドの価値観と相反するものになってしまいます。

なので、やりすぎない。

自分が作りたいもの、表現したいことに対して、加工も含めていろいろな要素を足し引きしていく中で、僕が大事にしているのは引き算の感覚。
どんどん足すのは簡単だけど、何を引くのかっていうのは難しい部分でもあるんです。
そこのバランスは常に意識していますし、このブランドでは特にそうですが、あえてやらない部分を作ることで理想に近づくこともあります。

 

-やりきらないということ?

木村:そうです。それによって着る人が育てていく余地を作るといいますか。

やりきって、ヴィンテージの表情を完全に再現しましたっていうのもできますし、それはそれでかっこいいんですが、今回のコレクションはそうしていません。

今までのアイテムに比べれば、少しヤレ感が出ているものばかりですが、ここから着込んでいただくことで着る人それぞれのパーソナルなアタリ感や経年変化を楽しんでもらえるようにということを意識しています。

そうすることで「着る人で完成する服」という僕がこのブランドで大事にしていることが表現できると考えました。

グレースケールコレクション ピンタックデニムトラウザースのデニム生地などの画像

 

-今までのmù_のアイテムとも相性がいい?

木村:そうですね。
むしろそうやって今までのmù_のアイテムと合わせた時にそれぞれがまた違った見え方になることを期待しています。

例えばイージートラウザースは少し上品にも見えるアイテムですが、ブルゾンと合わせることでまた違った表情になると思いますし、イージートラウザースの色によっても全体の雰囲気が変わってくる。
ブラックであれば上品にもなるし、グレイッシュブラウンなら古着感が強くなる、チャコールなら今回のGRAYSCALE COLLECTIONの一部のようなイメージで馴染んでくれる。

なので皆さんのワードローブの中に入っても、そうやって今まで持っていた服がまたちょっと違った印象に見えるというような変化があれば面白いなと思っています。

 

-通常販売するアイテムと店舗限定販売のmù_lab.に分けた理由は?

木村:mù_lab.というのは、ブランドの中で実験的な試みをする場所なんです。
そういう意味において今回のアイテムで当てはまるのが、ブルゾンとTシャツだったということですね。

ニットに関しては、実は昔に一度やったことがある加工なんです。
そのニットは僕自身すごく気に入っていて今でもよく着ているのですが、今回それをアップデートしたものになります。
なので完成するものがほぼ正確にイメージできていました。

ブラックデニムに関しても、デニムは自分の得意なアイテムであり、一度作った形ということもあって、このデザインにこの素材、この加工をすればこういう表情になるよねっていうのは分かったうえで作ったアイテムになります。

逆に今回のブルゾンとTシャツには、自分が今までやってきていない加工をしたので、最終的にどんなふうに完成するかが想像できない部分もあって、そういう面白みも含めて実験的なアイテムと位置付けています。

 

-簡単にそれぞれのアイテムの紹介を

サイト商品ページ サルファーダイドオーバーサイズニット、ピンタックデニムトラウザースの商品画像

木村:ニットはコットンなんですが、色の濃淡の出やすい特殊なブリーチをしていて、その濃淡をより活かすための工夫を入れてる。
なので見た目にも面白いと思いますし、色も染めて抜いて、また仕上げで染めていたりもしているので、絶妙な色味になっています。

ブラックデニムはピンタックデニムトラウザースというインディゴでもやってる形なんですが、このデザインを活かすようなアタリ感だけを入れて、はき込んだアタリ感はあえてつけていません。
はき込むことで、育てていってほしいアイテムになります。

サイト商品ページ グレースケール スタンドカラーブルゾン、クラッキングロゴTsh商品画像

ブルゾンは少しスポーティーな要素を取り入れたかったので、ナイロン100%の生地を使っているんですが、一見するとコットンの着古したようなブルゾンに見えると思います。そういう加工もそうですが、丸みが出るよう計算したシルエットも含めて、他にはないものになっています。

Tシャツのボディはあえて通常の染め方にして古着っぽさは出していないのですが、プリントをクラッキングプリントと言って割れやすいものを使用しています。
工場さんでの最終の洗いの段階でも割れていくので、納品された段階で割れ方に個体差が出ています。
それも店頭販売のみにした理由でもあるのですが、ぜひ見に来ていただいて自分の好みのものを見つけてほしいですね。

もう少し細かい説明はYouTubeの方でしているのでよかったら見てください()

 

GRAYSCALE COLLECTION

▼商品ページはこちら

GRAYSCALE SULFUR DYED OVERSIZE KNIT
colour:CHARCOAL
size:M/L/XL
price:¥33,000

GRAYSCALE PIN TUCK DENIM TROUSERS
colour:BLACK
size:S/M/L/XL
price:¥35,200

GRAYSCALE STAND COLLAR BLOUSON / mù_lab.#002
colour:CHARCOAL
size:M/L
price:¥57,200

GRAYSCALE CRACKING LOGO T / mù_lab.#003
colour:BLACK
size:M/L/XL
price:¥17,600

 

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