「服は生地からできている」
mù_が掲げるこのコンセプトを、最も純粋な形で体現した生地が完成した。
その名は「SUPIMA COTTON LOOP BACK」。
デザイナー木村が15年以上の付き合いを持つ和歌山 ニッターの職人と共同開発したオリジナル生地だ。
今回、この生地を使ってスウェットとパーカーの2型をリリースする。
表面にはヴィンテージの武骨さ、裏面にはカシミヤのような滑らかさ。
相反する要素を一枚の生地に閉じ込めた、mù_らしい一着が誕生した。
-この生地を作ろうと思ったきっかけは?
木村:ずっと作りたかった生地なんです。
見た目は粗野で武骨なのに、着た瞬間に驚くほど柔らかい。そのギャップをスウェットやパーカーで表現したかった。
普通、こういう裏毛の生地って、表にいい生地を持ってきて、裏側はコストを抑えるために安い生地を使うことが多いんです。
でも僕は逆にした。
表は粗野な雰囲気にして、裏側にこそいい生地を使う。
なぜかというと、着た時にテンションが上がるっていうのを大事にしているからです。
-表面の生地について教えてください
木村:表には空紡糸という、撚糸の段階で糸の真ん中が空洞になっている糸を使っています。
さらにスラブ糸なので、節のある凹凸感が出る。
空紡糸によってカラっと乾いたような、脂の抜けきった雰囲気が生まれるんです。
昔の機械で作られたようなヴィンテージの武骨感を出したかった。

-裏面は?
木村:裏側には繊維長の長いスーピマを使っています。
カシミヤのような滑らかな肌触りで、高級な綿を羽織ってる感覚を担保したかった。
この表と裏のギャップがすごく重要で、着心地が柔らかいことで、手に持った時よりも着た時のほうが軽く感じられるんです。
だから着心地がめちゃくちゃいい。
-この生地は和歌山のニッターさんと作ったそうですね
木村:はい。以前のブランドからもう15年以上の付き合いになる職人さんです。
僕はいろんな生地のアイデアを考えるのが好きで、職人さんを驚かせたいと常々思っているから、普通じゃやらないようなことも提案するんです。
でも、それを実際に形にするには職人さんの理解が必要で、僕の感覚的なアイデアを理解してくれる人じゃないと難しい。
特に編み物ってすごく奥が深いので簡単じゃないんですが、この人は昔から僕のアイデアを具現化するのがとてもうまくて、思い描いた以上のものを作ってくれる。絶大な信頼を置いています。
今回も話をしたときに僕のアイデアに共感してくれて、「面白いものができそうだからぜひやってみたい」と乗ってくれた。
本当に感謝しています。
-黒へのこだわりも強いと聞きました
木村:そうですね。僕もニッターさんも、アイデアの段階でこういう生地ができるよねってなったときに、「じゃあ、この生地を活かすためにはすごく深い黒を入れたい」っていう共通の思いを持ったんです。
化学繊維やウールに比べると、こういう編み物の綿って黒の入り方がどうしても薄くなる傾向にあって。
今回、リッチな雰囲気を出すために深くて濃い黒にしたかったので、それができる染工場で染めました。
これはどこでもできることじゃなくて、日本でも限られた染工場でしかできない。
黒の出方にすごくこだわっている工場で、国内外の有名ブランドも使っているところです。

-この生地でスウェットとパーカーの2型を作った理由は?
木村:この生地の魅力を一番引き出せるアイテムは何かって考えたときに、やっぱりスウェットとパーカーだったんです。
どちらも定番アイテムだからこそ、生地の違いがダイレクトに伝わる。
それと、この2型は別々に考えたんじゃなくて、作っている段階でクロスオーバーしながらこの形になったんです。
それを表現するために、一般的にはパーカーに見られるカンガルーポケットをあえてスウェットのほうに付けて、パーカーには脇にポケットを付けています。
HIGH NECK SWEAT SHIRT
-スウェットのシルエットについて
木村:身幅は大きめに取ってるんですが、着丈は短めにしています。
ワイドパンツとの相性を考えたときに、このバランスが一番きれいに見える。
首元と袖口でリブ幅を変えていて、シンプルなんだけど、どこか普通じゃない。
そういう複雑性を持たせたかった。
-カンガルーポケットをスウェットに付けた意図は?
木村:さっきも話しましたが、パーカーとスウェットを別々のものとして作ったんじゃなくて、同じ思想の中でクロスオーバーしながら生まれたということを表現したかった。
それと、カンガルーポケットってスポーティーでカジュアルなイメージがあるじゃないですか。
生地の粗野で武骨な雰囲気と相まって、カジュアル感のある要素になっているんですが、それに対して高級感のある深い黒を入れたことで、そのギャップも楽しめると思います。

SWEAT HOODIE
-パーカーのシルエットについて
木村:オーバーサイズの設定で、アウターのような存在感を持たせています。
ただ大きいだけじゃなくて、脇部分にフライスを入れてすっきりさせることで、大きめに取ったパーツが際立って、立体的なシルエットになる。
-フードのこだわりは?
木村:首元にもフライスを配していて、これがフードの形をキープしてくれます。
着たときにフードがふっくらと立体的に見えるのは、この設定のおかげですね。
-脇のポケットについて
木村:パーカーには脇にポケットを配置していて、これがハンドウォーマーの役割を果たしています。
一枚で外に出られる実用性があって、パーカーなんだけど、アウターっぽさがある。
パーカーの気軽さとアウターの存在感、両方を持たせたかった。
-最後に、この生地への思いを聞かせてください
木村:「服は生地からできている」というブランドの思いを、最も体現している生地だと思っています。
15年以上付き合いのある職人さんと、黒にこだわる染工場と、みんなで作り上げた。
自信を持っておすすめできる生地です。
手に取ったときの武骨さと、袖を通した瞬間の柔らかさ。
そのギャップをぜひ体感してほしいですね。

SWEAT HOODIE / SUPIMA COTTON LOOP BACK
colour:DEEP BLACK
size:M/L/XL
price:¥35,200
HIGH NECK SWEAT SHIRT / SUPIMA COTTON LOOP BACK
colour:DEEP BLACK
size:M/L/XL
price:¥30,800