服は生地からできている

創作の原点-「手で描く」こと、その余白にあるもの。

創作の原点-「手で描く」こと、その余白にあるもの。

幼い頃から、木村は自然と絵を描いていた。特別に習ったわけでも、意識していたわけでもない。ただ、好きだから描いていた。それが木村の創作の原点だ。 子供の視点だっからこそ描けた絵は、今でも実家に飾ってある。同じものはもう二度と描けない。だが今は、これまで触れてきた様々なものによって形作られた自分の感覚から、生み出される表現がある。自分が好きな時に、好きなものを描く。だからそれは、その時の木村にしか描けないものになる。 もともとギャラリースペースだった店舗の壁に飾られる絵は、すべて黒いペン一本で描かれている。そのモノトーンの佇まいには、見る人の感性によって受け止め方が変わるような余白がある。その余白こそが木村自身がアートを楽しむ感覚であり、mù_の洋服が持つ自由さと、自然と重なっていく。   -アート作品の発売に至った経緯を教えてください。 木村:今の店舗は、以前ギャラリーとして使われていた物件なんです。その場所の歴史を活かしたくて、もともと壁にあった穴や額縁を飾るための線もあえてそのまま残して使っています。 最初はデザイン画や落書き、コピー用紙に描いたイラストを飾っていただけで。でも、それを見た海外のお客様や若いカップルから「描いた人に会いたい」「この絵を譲ってほしい」という声をいただいて。 服以外のクリエイティブにも興味を持ってくださる方がいるなら、ちゃんと描いたものを届けたいと思い、本格的に描き始めたのがきっかけです。   -昔から絵を描くが好きだったんですか? 木村:幼稚園の頃から大好きでした。小学校の時に大阪府知事賞をもらったことがあって。 美術の専門的な勉強はしていないんですが、独学だからこそセオリーに縛られず、自由に描けるという面があると思っています。 絵を描くことが自分の創作の原点で、もし絵が好きでなければ今の仕事もしていなかったかもしれないですね。   -手で描くことにこだわっている理由は? 木村:デザインも手書きから始めるんですけど、手で描くという作業は自分の創作においてすごく重要で。 デジタルだと脳で想像したものがツールを介して綺麗に処理されすぎてしまって、微妙なニュアンスが薄れてしまう気がするんです。手書きのほうが、脳から手への伝達がダイレクトな気がしていて。例えば、服のデザインで柔らかさや質感を出したいとき、線の引き方ひとつに込める思いが、手書きのほうがそのまま出てくる感じがします。   -影響を受けたアーティストはいますか? 木村:ジェイミー・リードがすごく好きで、シリアルナンバー入りの作品を持ってるくらい。セックス・ピストルズのアートワークで知られている人ですけど、1970年代のパンクスピリットにある、世の中に対する皮肉やジョーク、既成概念を崩すような表現にずっと共感していて。単に綺麗で正しいものよりも、どこかひねりがあったり、一見グロテスクなものをかっこよく見せたりする世界観が好きなんです。 そういうものに触れてきたことが、今の自分の感覚を作っているひとつだと思います。   -作品作りで意識していることはありますか? 木村:展示では、一人の人間が描いたように見えないことを意識しています。リアルなタッチもあればアニメ調もあって、まるで多重人格者がそれぞれ描いた集合展のような多様性を出したいと思っていて。ただ、全部その時の自分の頭の中から出てきたものなので、集めてみると案外ひとつに繋がっていたりします。 描きたいものを描くというのが一番の基本で、打算的なものが入ると自分が伝えたいものとは違うものができてしまう。自分のスニーカーに落書きするような感覚と基本的には同じです。   -白黒のペンにこだわっている理由は? 木村:見ている人に自由に想像してほしいから、というのが一番の理由です。 服作りにおける余白を残すという考えと同じで、色をつけてしまうとみる人の想像がそこに誘導されてしまう。モノクロにすることで、見る人それぞれが自分の好きな色を想像して、パーソナルな感覚で受け取ってくれたらいいなと。 自分がアートを見るときも、説明を読む前にまず自分で想像して、その後に背景を調べて答え合わせをするような見方をしているので、自分が作る絵もそうあってほしいという感じですね。...

創作の原点-「手で描く」こと、その余白にあるもの。

幼い頃から、木村は自然と絵を描いていた。特別に習ったわけでも、意識していたわけでもない。ただ、好きだから描いていた。それが木村の創作の原点だ。 子供の視点だっからこそ描けた絵は、今でも実家に飾ってある。同じものはもう二度と描けない。だが今は、これまで触れてきた様々なものによって形作られた自分の感覚から、生み出される表現がある。自分が好きな時に、好きなものを描く。だからそれは、その時の木村にしか描けないものになる。 もともとギャラリースペースだった店舗の壁に飾られる絵は、すべて黒いペン一本で描かれている。そのモノトーンの佇まいには、見る人の感性によって受け止め方が変わるような余白がある。その余白こそが木村自身がアートを楽しむ感覚であり、mù_の洋服が持つ自由さと、自然と重なっていく。   -アート作品の発売に至った経緯を教えてください。 木村:今の店舗は、以前ギャラリーとして使われていた物件なんです。その場所の歴史を活かしたくて、もともと壁にあった穴や額縁を飾るための線もあえてそのまま残して使っています。 最初はデザイン画や落書き、コピー用紙に描いたイラストを飾っていただけで。でも、それを見た海外のお客様や若いカップルから「描いた人に会いたい」「この絵を譲ってほしい」という声をいただいて。 服以外のクリエイティブにも興味を持ってくださる方がいるなら、ちゃんと描いたものを届けたいと思い、本格的に描き始めたのがきっかけです。   -昔から絵を描くが好きだったんですか? 木村:幼稚園の頃から大好きでした。小学校の時に大阪府知事賞をもらったことがあって。 美術の専門的な勉強はしていないんですが、独学だからこそセオリーに縛られず、自由に描けるという面があると思っています。 絵を描くことが自分の創作の原点で、もし絵が好きでなければ今の仕事もしていなかったかもしれないですね。   -手で描くことにこだわっている理由は? 木村:デザインも手書きから始めるんですけど、手で描くという作業は自分の創作においてすごく重要で。 デジタルだと脳で想像したものがツールを介して綺麗に処理されすぎてしまって、微妙なニュアンスが薄れてしまう気がするんです。手書きのほうが、脳から手への伝達がダイレクトな気がしていて。例えば、服のデザインで柔らかさや質感を出したいとき、線の引き方ひとつに込める思いが、手書きのほうがそのまま出てくる感じがします。   -影響を受けたアーティストはいますか? 木村:ジェイミー・リードがすごく好きで、シリアルナンバー入りの作品を持ってるくらい。セックス・ピストルズのアートワークで知られている人ですけど、1970年代のパンクスピリットにある、世の中に対する皮肉やジョーク、既成概念を崩すような表現にずっと共感していて。単に綺麗で正しいものよりも、どこかひねりがあったり、一見グロテスクなものをかっこよく見せたりする世界観が好きなんです。 そういうものに触れてきたことが、今の自分の感覚を作っているひとつだと思います。   -作品作りで意識していることはありますか? 木村:展示では、一人の人間が描いたように見えないことを意識しています。リアルなタッチもあればアニメ調もあって、まるで多重人格者がそれぞれ描いた集合展のような多様性を出したいと思っていて。ただ、全部その時の自分の頭の中から出てきたものなので、集めてみると案外ひとつに繋がっていたりします。 描きたいものを描くというのが一番の基本で、打算的なものが入ると自分が伝えたいものとは違うものができてしまう。自分のスニーカーに落書きするような感覚と基本的には同じです。   -白黒のペンにこだわっている理由は? 木村:見ている人に自由に想像してほしいから、というのが一番の理由です。 服作りにおける余白を残すという考えと同じで、色をつけてしまうとみる人の想像がそこに誘導されてしまう。モノクロにすることで、見る人それぞれが自分の好きな色を想像して、パーソナルな感覚で受け取ってくれたらいいなと。 自分がアートを見るときも、説明を読む前にまず自分で想像して、その後に背景を調べて答え合わせをするような見方をしているので、自分が作る絵もそうあってほしいという感じですね。...

日本のデニムを使う価値。職人が紡いできた歴史と、次の時代のヴィンテージへの想いを込めたオリジナルデニム

日本のデニムを使う価値。職人が紡いできた歴史と、次の時代のヴィンテージへの想いを込めたオリジナ...

木村がデニムの携わってきた年数は20年以上。その間に手掛けたデニムは、加工も含めると200を超える。そんな木村が、mù_でデニムを作るときに選んだのは、日本の生地だった。 見ためは無骨なのに、穿いた瞬間に驚くほど柔らかい。そのギャップを生み出しているのは、1950年代の精紡機で撚られた緯糸だ。古い機械が生む糸の緩みが、ヘビーオンスでありながら柔らかいという、相反する要素を一枚の生地に宿す。 そしてこのデニムには、もう一つの想いが込められている。 「今作っているものが、将来ヴィンテージになってほしい。」 木村はそう語る。 セルビッジという王道の製法をあえて外し、現代の機械と技術を使って作ることで、この時代にしか作れないデニムを目指している。   -デニムパンツの第二弾ですが、前作との違いから教えてください。 木村:前回のピンタックデニムトラウザースは、生地の柔らかさを活かしながら、比較的すっきりとしたシルエットで作りました。 今回はその逆で、ワイドなシルエットにすることで、この生地が持つドレープ性をより前面に押し出しています。体に対して生地が余る分、それが柔らかさとなって出てくる。 そういうデニムを作りたかったんです。   -この生地の特徴を改めて教えてください。 木村:緯糸に1950年代の精紡機で撚った糸を使っているんですが、古い機械で作った糸って、締まりが少し弱い傾向があって。 その特性を使うことで、生地自体はしっかりしているんだけど、通常のデニムよりも柔らかい風合いに仕上がるんです。 見た目は無骨なのに穿いてみると驚くほど柔らかい。そのギャップがこの生地の一番の特徴です。   -あえてセルビッジを使わなかった理由は? 木村:セルビッジはものすごく好きだし、価値のあるものだと思っています。ただ、自分がデザインするってなったときに、今世界的にセルビッジが注目されているからこそ、あえてそこを外したかった。 セルビッジではなくダブル幅のデニムを使いながら、内側のロック始末にメローロックを採用することで、セルビッジのような脇の表情を現代的な技術で表現しています。 オマージュというか、リスペクトを込めた上で、新しい解釈でやってみようという感じです。   -「次のヴィンテージ」という発想についても聞かせてください。 木村:今ヴィンテージと言われるものって、作った人たちがヴィンテージになろうと思って作ったわけじゃないと思うんです。 実用的に作ったものが、時間をかけて受け継がれてヴィンテージになっていった。であれば、今この時代に現代の機械と技術で作ったものが、100年後にヴィンテージと呼ばれる可能性があるんじゃないかと。あえてセルビッジという昔の製法ではなく、今だからこそできる作り方で作っているのはそういう想いがあるからです。   -色へのこだわりも教えてください。 木村:日本のデニムって、藍の中でも少しグリーンに触れるような深い色が多いんですけど、僕が好きなのはアメリカの王道的な、少し赤みに触れるような色合いで。 今回はその赤みのある青みを選びながら、でも軽くなりすぎないように深みも持たせています。柔らかさや軽さは赤みで表現して、無骨な重厚感は色の深さで表現する。 その両方をひとつのインディゴの色の中に収めた感じです。...

日本のデニムを使う価値。職人が紡いできた歴史と、次の時代のヴィンテージへの想いを込めたオリジナ...

木村がデニムの携わってきた年数は20年以上。その間に手掛けたデニムは、加工も含めると200を超える。そんな木村が、mù_でデニムを作るときに選んだのは、日本の生地だった。 見ためは無骨なのに、穿いた瞬間に驚くほど柔らかい。そのギャップを生み出しているのは、1950年代の精紡機で撚られた緯糸だ。古い機械が生む糸の緩みが、ヘビーオンスでありながら柔らかいという、相反する要素を一枚の生地に宿す。 そしてこのデニムには、もう一つの想いが込められている。 「今作っているものが、将来ヴィンテージになってほしい。」 木村はそう語る。 セルビッジという王道の製法をあえて外し、現代の機械と技術を使って作ることで、この時代にしか作れないデニムを目指している。   -デニムパンツの第二弾ですが、前作との違いから教えてください。 木村:前回のピンタックデニムトラウザースは、生地の柔らかさを活かしながら、比較的すっきりとしたシルエットで作りました。 今回はその逆で、ワイドなシルエットにすることで、この生地が持つドレープ性をより前面に押し出しています。体に対して生地が余る分、それが柔らかさとなって出てくる。 そういうデニムを作りたかったんです。   -この生地の特徴を改めて教えてください。 木村:緯糸に1950年代の精紡機で撚った糸を使っているんですが、古い機械で作った糸って、締まりが少し弱い傾向があって。 その特性を使うことで、生地自体はしっかりしているんだけど、通常のデニムよりも柔らかい風合いに仕上がるんです。 見た目は無骨なのに穿いてみると驚くほど柔らかい。そのギャップがこの生地の一番の特徴です。   -あえてセルビッジを使わなかった理由は? 木村:セルビッジはものすごく好きだし、価値のあるものだと思っています。ただ、自分がデザインするってなったときに、今世界的にセルビッジが注目されているからこそ、あえてそこを外したかった。 セルビッジではなくダブル幅のデニムを使いながら、内側のロック始末にメローロックを採用することで、セルビッジのような脇の表情を現代的な技術で表現しています。 オマージュというか、リスペクトを込めた上で、新しい解釈でやってみようという感じです。   -「次のヴィンテージ」という発想についても聞かせてください。 木村:今ヴィンテージと言われるものって、作った人たちがヴィンテージになろうと思って作ったわけじゃないと思うんです。 実用的に作ったものが、時間をかけて受け継がれてヴィンテージになっていった。であれば、今この時代に現代の機械と技術で作ったものが、100年後にヴィンテージと呼ばれる可能性があるんじゃないかと。あえてセルビッジという昔の製法ではなく、今だからこそできる作り方で作っているのはそういう想いがあるからです。   -色へのこだわりも教えてください。 木村:日本のデニムって、藍の中でも少しグリーンに触れるような深い色が多いんですけど、僕が好きなのはアメリカの王道的な、少し赤みに触れるような色合いで。 今回はその赤みのある青みを選びながら、でも軽くなりすぎないように深みも持たせています。柔らかさや軽さは赤みで表現して、無骨な重厚感は色の深さで表現する。 その両方をひとつのインディゴの色の中に収めた感じです。...

mù_の偽物を作る?木村が仕掛けるアンオフィシャルな遊び。

mù_の偽物を作る?木村が仕掛けるアンオフィシャルな遊び。

ブランドがスタートする前から、木村の頭の中にずっとしまい込まれていたアイデアがあった。それが「ブート」だ。 古着屋で見かける、精巧なのか雑なのかよくわからない偽物のTシャツ。バンドのライブグッズに混じった非公式のプリントもの。 偽物が存在するということは、本物がそれだけ誰かに羨まれ、リスペクトされているということだ。木村はそこにある種の憧れを感じてきた。 mù_はまだ規模の小さいブランド。今の状況で偽物が出回るかといえば、誰も作ってくれない。 であれば、自分たちで作ってしまえ。そんな発想から生まれたのが、今回のポップアップイベントでひっそりと古着に紛れ込むアンオフィシャルなアイテムだ。   -このアイデア、いつ頃からあったのか? 木村:ブランドをスタートする前からです。 フリーマーケットに参加して、その中に偽物を紛れ込ませるっていう構想はあったんですけど、何をしたら一番面白いんだろうっていうところがなかなか繋がらなくて。   -今回のポップアップイベントがそのきっかけになった? 木村:そうです。4月24日から26日の3日間、うちの実店舗の地下1階で「ファッション一郎」の古着のポップアップイベントをやることになって。 そのときにずっと温めていたこのアイデアと繋がったんです。古着の中にブートが紛れ込んでるっていう、古着屋でよく見る光景を自分たちで演出できるなと。ようやく引き出しを開けられるって感じでした。   -なぜ「偽物」にこだわるんでしょう? 木村:偽物が作られるって、それだけ本物がすごいことになってる証拠だと思うんです。 誰も知らないものの偽物は作らない。バンドのTシャツでも有名ブランドでも、偽物が出回るってことはそこへのリスペクトがある。うちのブランドはまだそこまで達していないので、であれば自分たちで作ってしまおうと。ちょっと情けない嫉妬心も含めて、いつかそうなりたいっていう希望も込めて。   -アイテムの作り方もあえて変えてるんですか? 木村:そうです。 うちのブランドって生地の選定からパターンも一から作るのが基本なんですけど、今回はあえてその真逆で。 よくライブグッズなんかで見るような市販のボディにプリントするっていう作り方にしています。プリントの入れ方もあえて一回刷りにして、ちょっとムラになるようにして。素人が版を作って刷りましたみたいな雰囲気を出したくて。   -アートワークのこだわりも聞かせてください。 木村:自分が絶対やらないことをやる、というのが基準で。 カタカナで「ム」を使ったり、「TOKYO JAPAN」を入れたり。僕がデザインするときには絶対使わない表現なんです。でも、それがブートっぽい絶妙なダサさになる。自分は好きだけど、このブランドの中には入れないものを意図的に詰め込んでる感じですね。   -これは本物なんですか、偽物なんですか? 木村:僕の中では偽物です。だからといって偽物だから買わないでくださいってわけではなくて。ただ、うちのお客様が買っていただいて、次にお店に来た時には、僕らは「これ偽物ですよ。」って言う。でも、同じデザイナーがデザインしてるんですけどね。意味がわからないですよね。...

mù_の偽物を作る?木村が仕掛けるアンオフィシャルな遊び。

ブランドがスタートする前から、木村の頭の中にずっとしまい込まれていたアイデアがあった。それが「ブート」だ。 古着屋で見かける、精巧なのか雑なのかよくわからない偽物のTシャツ。バンドのライブグッズに混じった非公式のプリントもの。 偽物が存在するということは、本物がそれだけ誰かに羨まれ、リスペクトされているということだ。木村はそこにある種の憧れを感じてきた。 mù_はまだ規模の小さいブランド。今の状況で偽物が出回るかといえば、誰も作ってくれない。 であれば、自分たちで作ってしまえ。そんな発想から生まれたのが、今回のポップアップイベントでひっそりと古着に紛れ込むアンオフィシャルなアイテムだ。   -このアイデア、いつ頃からあったのか? 木村:ブランドをスタートする前からです。 フリーマーケットに参加して、その中に偽物を紛れ込ませるっていう構想はあったんですけど、何をしたら一番面白いんだろうっていうところがなかなか繋がらなくて。   -今回のポップアップイベントがそのきっかけになった? 木村:そうです。4月24日から26日の3日間、うちの実店舗の地下1階で「ファッション一郎」の古着のポップアップイベントをやることになって。 そのときにずっと温めていたこのアイデアと繋がったんです。古着の中にブートが紛れ込んでるっていう、古着屋でよく見る光景を自分たちで演出できるなと。ようやく引き出しを開けられるって感じでした。   -なぜ「偽物」にこだわるんでしょう? 木村:偽物が作られるって、それだけ本物がすごいことになってる証拠だと思うんです。 誰も知らないものの偽物は作らない。バンドのTシャツでも有名ブランドでも、偽物が出回るってことはそこへのリスペクトがある。うちのブランドはまだそこまで達していないので、であれば自分たちで作ってしまおうと。ちょっと情けない嫉妬心も含めて、いつかそうなりたいっていう希望も込めて。   -アイテムの作り方もあえて変えてるんですか? 木村:そうです。 うちのブランドって生地の選定からパターンも一から作るのが基本なんですけど、今回はあえてその真逆で。 よくライブグッズなんかで見るような市販のボディにプリントするっていう作り方にしています。プリントの入れ方もあえて一回刷りにして、ちょっとムラになるようにして。素人が版を作って刷りましたみたいな雰囲気を出したくて。   -アートワークのこだわりも聞かせてください。 木村:自分が絶対やらないことをやる、というのが基準で。 カタカナで「ム」を使ったり、「TOKYO JAPAN」を入れたり。僕がデザインするときには絶対使わない表現なんです。でも、それがブートっぽい絶妙なダサさになる。自分は好きだけど、このブランドの中には入れないものを意図的に詰め込んでる感じですね。   -これは本物なんですか、偽物なんですか? 木村:僕の中では偽物です。だからといって偽物だから買わないでくださいってわけではなくて。ただ、うちのお客様が買っていただいて、次にお店に来た時には、僕らは「これ偽物ですよ。」って言う。でも、同じデザイナーがデザインしてるんですけどね。意味がわからないですよね。...

ROUND HEM JACKET | mù_

「ジャケットを作ろうと思ったわけではない。」生地への想いから生まれた、mù_初のジャケット

「ジャケットを作ろうと思ったわけではない。」 ブランドとして初のジャケットについて、木村に聞くと最初にそんな言葉が出てきた。 ブランドの定番であるEASY TROUSERS(イージートラウザース)とPOSTMAN BAG(ポストマンバッグ)にも使われている、ニドムバイオ加工を施したTC素材で羽織れるアイテムを作りたい。 スタートはあくまでも生地であり、その生地を活かすためのデザインを突き詰めていったときに、最終的にこの形にたどり着いたのだという。 着る人によって違って見える。 EASY TROUSERSでもそうだったが、この生地を活かすために木村がこだわっていることだ。パッと見はジャケット。でも決して堅苦しくない。少し力の抜けたリラックスしたラフさを持たせている。 きっちり見えながらも、どこか着崩して見える。その自由さが、それぞれのスタイルに馴染んでいく。   -ブランド初のジャケット 木村:ジャケットを作りたかったわけではないんです。 EASY TROUSERSとPOSTMAN BAGで使っている生地で、羽織れるようなアウターを作りたいっていうのがスタートで。 そうなったときに、せっかくならEASY TROUSERSとセットアップで合わせられるといいなと。生地の特徴を活かすために、ラフさと上品さを併せ持ったものを考えていったら、こういうデザインになりました。 アイテム名にジャケットとついているので、ジャケットはジャケットなんですけど、僕の中ではラペルの付いた羽織もの、という感覚に近いですね。   -改めてこの生地の特徴は? 木村:この生地は本当に気に入ってるんです。 古着好きが見ると上品に映るのに、かっちりした服を着る人には気が抜けて見える。同じものが、見る人によって違って見える。そんな素材だと思っています。 丈夫でハリのあるTC素材に、コシを抜く加工を施すことで生地本来の特徴を担保しながら、カジュアルな佇まいの中に柔らかで上品なドレープを纏わせています。 うちのブランドを象徴する生地ですね。   -その生地を活かすために工夫したことは? 木村:EASY TROUSERSでは、イージーパンツの履き心地を持ちながらスラックスのような上品さを表現することで、この生地が持つラフさと上品さの両面を引き出しました。 今回のジャケットでも同じ考え方で、カジュアルな作りの中にテーラードの要素を取り入れることで、その両面を表現しています。...

「ジャケットを作ろうと思ったわけではない。」生地への想いから生まれた、mù_初のジャケット

「ジャケットを作ろうと思ったわけではない。」 ブランドとして初のジャケットについて、木村に聞くと最初にそんな言葉が出てきた。 ブランドの定番であるEASY TROUSERS(イージートラウザース)とPOSTMAN BAG(ポストマンバッグ)にも使われている、ニドムバイオ加工を施したTC素材で羽織れるアイテムを作りたい。 スタートはあくまでも生地であり、その生地を活かすためのデザインを突き詰めていったときに、最終的にこの形にたどり着いたのだという。 着る人によって違って見える。 EASY TROUSERSでもそうだったが、この生地を活かすために木村がこだわっていることだ。パッと見はジャケット。でも決して堅苦しくない。少し力の抜けたリラックスしたラフさを持たせている。 きっちり見えながらも、どこか着崩して見える。その自由さが、それぞれのスタイルに馴染んでいく。   -ブランド初のジャケット 木村:ジャケットを作りたかったわけではないんです。 EASY TROUSERSとPOSTMAN BAGで使っている生地で、羽織れるようなアウターを作りたいっていうのがスタートで。 そうなったときに、せっかくならEASY TROUSERSとセットアップで合わせられるといいなと。生地の特徴を活かすために、ラフさと上品さを併せ持ったものを考えていったら、こういうデザインになりました。 アイテム名にジャケットとついているので、ジャケットはジャケットなんですけど、僕の中ではラペルの付いた羽織もの、という感覚に近いですね。   -改めてこの生地の特徴は? 木村:この生地は本当に気に入ってるんです。 古着好きが見ると上品に映るのに、かっちりした服を着る人には気が抜けて見える。同じものが、見る人によって違って見える。そんな素材だと思っています。 丈夫でハリのあるTC素材に、コシを抜く加工を施すことで生地本来の特徴を担保しながら、カジュアルな佇まいの中に柔らかで上品なドレープを纏わせています。 うちのブランドを象徴する生地ですね。   -その生地を活かすために工夫したことは? 木村:EASY TROUSERSでは、イージーパンツの履き心地を持ちながらスラックスのような上品さを表現することで、この生地が持つラフさと上品さの両面を引き出しました。 今回のジャケットでも同じ考え方で、カジュアルな作りの中にテーラードの要素を取り入れることで、その両面を表現しています。...

SUPIMA COTTON LOOP BACK-15年来 付き合いのある職人と作り上げた、mù_の思想を体現するオリジナル生地

SUPIMA COTTON LOOP BACK-15年来 付き合いのある職人と作り上げた、mù...

「服は生地からできている」 mù_が掲げるこのコンセプトを、最も純粋な形で体現した生地が完成した。 その名は「SUPIMA COTTON LOOP BACK」。 デザイナー木村が15年以上の付き合いを持つ和歌山 ニッターの職人と共同開発したオリジナル生地だ。今回、この生地を使ってスウェットとパーカーの2型をリリースする。表面にはヴィンテージの武骨さ、裏面にはカシミヤのような滑らかさ。 相反する要素を一枚の生地に閉じ込めた、mù_らしい一着が誕生した。   -この生地を作ろうと思ったきっかけは? 木村:ずっと作りたかった生地なんです。見た目は粗野で武骨なのに、着た瞬間に驚くほど柔らかい。そのギャップをスウェットやパーカーで表現したかった。 普通、こういう裏毛の生地って、表にいい生地を持ってきて、裏側はコストを抑えるために安い生地を使うことが多いんです。でも僕は逆にした。表は粗野な雰囲気にして、裏側にこそいい生地を使う。なぜかというと、着た時にテンションが上がるっていうのを大事にしているからです。   -表面の生地について教えてください 木村:表には空紡糸という、撚糸の段階で糸の真ん中が空洞になっている糸を使っています。さらにスラブ糸なので、節のある凹凸感が出る。空紡糸によってカラっと乾いたような、脂の抜けきった雰囲気が生まれるんです。昔の機械で作られたようなヴィンテージの武骨感を出したかった。   -裏面は? 木村:裏側には繊維長の長いスーピマを使っています。カシミヤのような滑らかな肌触りで、高級な綿を羽織ってる感覚を担保したかった。この表と裏のギャップがすごく重要で、着心地が柔らかいことで、手に持った時よりも着た時のほうが軽く感じられるんです。だから着心地がめちゃくちゃいい。   -この生地は和歌山のニッターさんと作ったそうですね 木村:はい。以前のブランドからもう15年以上の付き合いになる職人さんです。僕はいろんな生地のアイデアを考えるのが好きで、職人さんを驚かせたいと常々思っているから、普通じゃやらないようなことも提案するんです。でも、それを実際に形にするには職人さんの理解が必要で、僕の感覚的なアイデアを理解してくれる人じゃないと難しい。特に編み物ってすごく奥が深いので簡単じゃないんですが、この人は昔から僕のアイデアを具現化するのがとてもうまくて、思い描いた以上のものを作ってくれる。絶大な信頼を置いています。 今回も話をしたときに僕のアイデアに共感してくれて、「面白いものができそうだからぜひやってみたい」と乗ってくれた。本当に感謝しています。   -黒へのこだわりも強いと聞きました 木村:そうですね。僕もニッターさんも、アイデアの段階でこういう生地ができるよねってなったときに、「じゃあ、この生地を活かすためにはすごく深い黒を入れたい」っていう共通の思いを持ったんです。 化学繊維やウールに比べると、こういう編み物の綿って黒の入り方がどうしても薄くなる傾向にあって。今回、リッチな雰囲気を出すために深くて濃い黒にしたかったので、それができる染工場で染めました。これはどこでもできることじゃなくて、日本でも限られた染工場でしかできない。黒の出方にすごくこだわっている工場で、国内外の有名ブランドも使っているところです。   -この生地でスウェットとパーカーの2型を作った理由は? 木村:この生地の魅力を一番引き出せるアイテムは何かって考えたときに、やっぱりスウェットとパーカーだったんです。どちらも定番アイテムだからこそ、生地の違いがダイレクトに伝わる。それと、この2型は別々に考えたんじゃなくて、作っている段階でクロスオーバーしながらこの形になったんです。それを表現するために、一般的にはパーカーに見られるカンガルーポケットをあえてスウェットのほうに付けて、パーカーには脇にポケットを付けています。...

SUPIMA COTTON LOOP BACK-15年来 付き合いのある職人と作り上げた、mù...

「服は生地からできている」 mù_が掲げるこのコンセプトを、最も純粋な形で体現した生地が完成した。 その名は「SUPIMA COTTON LOOP BACK」。 デザイナー木村が15年以上の付き合いを持つ和歌山 ニッターの職人と共同開発したオリジナル生地だ。今回、この生地を使ってスウェットとパーカーの2型をリリースする。表面にはヴィンテージの武骨さ、裏面にはカシミヤのような滑らかさ。 相反する要素を一枚の生地に閉じ込めた、mù_らしい一着が誕生した。   -この生地を作ろうと思ったきっかけは? 木村:ずっと作りたかった生地なんです。見た目は粗野で武骨なのに、着た瞬間に驚くほど柔らかい。そのギャップをスウェットやパーカーで表現したかった。 普通、こういう裏毛の生地って、表にいい生地を持ってきて、裏側はコストを抑えるために安い生地を使うことが多いんです。でも僕は逆にした。表は粗野な雰囲気にして、裏側にこそいい生地を使う。なぜかというと、着た時にテンションが上がるっていうのを大事にしているからです。   -表面の生地について教えてください 木村:表には空紡糸という、撚糸の段階で糸の真ん中が空洞になっている糸を使っています。さらにスラブ糸なので、節のある凹凸感が出る。空紡糸によってカラっと乾いたような、脂の抜けきった雰囲気が生まれるんです。昔の機械で作られたようなヴィンテージの武骨感を出したかった。   -裏面は? 木村:裏側には繊維長の長いスーピマを使っています。カシミヤのような滑らかな肌触りで、高級な綿を羽織ってる感覚を担保したかった。この表と裏のギャップがすごく重要で、着心地が柔らかいことで、手に持った時よりも着た時のほうが軽く感じられるんです。だから着心地がめちゃくちゃいい。   -この生地は和歌山のニッターさんと作ったそうですね 木村:はい。以前のブランドからもう15年以上の付き合いになる職人さんです。僕はいろんな生地のアイデアを考えるのが好きで、職人さんを驚かせたいと常々思っているから、普通じゃやらないようなことも提案するんです。でも、それを実際に形にするには職人さんの理解が必要で、僕の感覚的なアイデアを理解してくれる人じゃないと難しい。特に編み物ってすごく奥が深いので簡単じゃないんですが、この人は昔から僕のアイデアを具現化するのがとてもうまくて、思い描いた以上のものを作ってくれる。絶大な信頼を置いています。 今回も話をしたときに僕のアイデアに共感してくれて、「面白いものができそうだからぜひやってみたい」と乗ってくれた。本当に感謝しています。   -黒へのこだわりも強いと聞きました 木村:そうですね。僕もニッターさんも、アイデアの段階でこういう生地ができるよねってなったときに、「じゃあ、この生地を活かすためにはすごく深い黒を入れたい」っていう共通の思いを持ったんです。 化学繊維やウールに比べると、こういう編み物の綿って黒の入り方がどうしても薄くなる傾向にあって。今回、リッチな雰囲気を出すために深くて濃い黒にしたかったので、それができる染工場で染めました。これはどこでもできることじゃなくて、日本でも限られた染工場でしかできない。黒の出方にすごくこだわっている工場で、国内外の有名ブランドも使っているところです。   -この生地でスウェットとパーカーの2型を作った理由は? 木村:この生地の魅力を一番引き出せるアイテムは何かって考えたときに、やっぱりスウェットとパーカーだったんです。どちらも定番アイテムだからこそ、生地の違いがダイレクトに伝わる。それと、この2型は別々に考えたんじゃなくて、作っている段階でクロスオーバーしながらこの形になったんです。それを表現するために、一般的にはパーカーに見られるカンガルーポケットをあえてスウェットのほうに付けて、パーカーには脇にポケットを付けています。...

私物の古着が纏うミリタリーの空気感を取り込みつつ、柔らかく立体的なフォルムへと昇華させた、渾身のカーゴパンツ

私物の古着が纏うミリタリーの空気感を取り込みつつ、柔らかく立体的なフォルムへと昇華させた、渾身...

デザイナー木村は10代のころから古着に魅了されてきた。洋服をデザインするようになってからも、ワードローブには常に古着のアイテムがあり、彼が大きな影響を受けたカルチャーとともに、その独創的なクリエイティビティの源泉となっている。 今回のカーゴパンツも、ベースとなったのは木村が長年愛用してきたヴィンテージ。数サイズ大きめを選び、その「太さ」を楽しみながら穿き続けてきた一本だ。そのインスピレーションをもとに、緻密にディテールを設計し、立体的で丸みを帯びたシルエットを作り上げた。 ミリタリーの武骨さを活かしながらも、ヴィンテージのラフさとは一線を画す、どこか上品で柔らかい雰囲気を纏った、まさにmù_らしいカーゴパンツが完成した。   -どんな一着を目指した? 木村:愛用している70年代くらいのフランス軍M64というカーゴパンツは、あえてサイズを数段大きめに選んでいます。その太さがすごく気に入っているんです。ただ、全体的な太さはいいんですが、サイズも大きいから当然太くなくてもいいところに太さが出るんですよね。例えば、ウエストなんかはベルトでかなり絞らないといけなくて、そうするとヒップ周りがきれいに穿けない。これがもう少し上品に穿けたらなと考えました。数字では表せない自然な太さを出すために、生地の分量を360度に分散させて立体的なシルエットを作りました。   -生地のこだわり 木村:上品な雰囲気にしたいからといって、チノ素材やスポーティーな素材にするとどうしてもモードっぽくなってしまう。そもそもイメージしていた形はオーソドックスなカーゴパンツっていうところで、その王道なミリタリーという部分を表現するのに、素材もミリタリーで使われるバックサテンを使いました。   -バックサテンの特徴 木村:光沢があってフラットなサテン地の裏面を使っていて、サテンっていうのは朱子織とも言って、通常のツイルや平織りとは違い、わりと強度もある織り方なんですけど、裏面なので少し節が出るのが特徴で、ミリタリーの素材としてオーソドックス。染めに関しても硫化染料を使っているので、経年変化なんかも含めて、ミリタリーウェアらしい雰囲気が出ると思います。   -生地もデザインも一見すると王道のカーゴパンツということだが、どこで違いを出している? 木村:やっぱり穿いた時のシルエット。まず、太さでいうと今までうちで出してきたどのパンツよりも太くなっています。けど、ただ太いだけじゃなくて、僕がやりたかったのはその太さを360度立体的に逃がしながら、全体的に太いんだけど上品に見えるドレープ感や、生地の流れを表現したかったんです。最近のストリートっぽい作りだと、わざと横に広げてしまったり、横から見たときに極端に太く見えるみたいなのがミリタリーものには多いと思うんですが、それをいかに360度逃がしながら丸みを作り、太さを出していくかっていうところに対して、いろいろな操作をしました。なので、穿いたときに見えるシルエットとしては、どこか一か所で横に広がったり、縦に広がったりというのではなく、全体的に太さを分散させながら柔らかいワイドなシルエットを作っているというのが特徴です。   -そのシルエットを作るためにこだわった部分は? 木村:ウエストにはキックバックの強いゴムを使ったシャーリングを入れてます。ベルトで無理に締めなくてもきれいに収まり、ヒップが美しく見えます。それとカーゴパンツはカーゴポケットが特徴だと思うんですが、このポケットを拠点に生地が固まってしまうというか、ポケットが付いている太ももあたりでどうしても強制的に横に広がってしまいます。そこで、全体的にきれいな丸みを出すために、スリータックを入れているんですが、タック位置を脇に向けて段階的に広がるような入れ方をすることで、ウエストのシャーリングと相まって、ウエストから太ももまでの腰の自然な丸みが生きるように立体的で柔らかなシルエットを作っています。 あとは裾の部分ですね。通常のカーゴパンツだと、裾にドローコードを付けて、それを締めることで強制的な丸みを作るんですが、これは裾から逆方向に向けてタックを入れることによって、裾口は狭いんだけど、自然な形で丸みを帯びながら、柔らかく閉じるようにしています。 ポケットを起点にして、上は柔らかく広げる操作、下は柔らかく絞っていく操作をすることで、全体で見たときに極端に強制的に絞るのではなくて、自然な流れの中で丸みができるよう計算しています。   -丸みにこだわるのは? 木村:自分のモノづくりとして、人間の体の丸みや、体の動きを考えたうえでの着心地というのは重要視しているので、このパンツに限らずこだわっています。このカーゴパンツでいうと、スリータックを入れることで、横軸だけじゃなく、前後の膨らみも出てくるので、360度立体的な太さを表現できていると思います。 カーゴパンツに限らず、ニッカポッカなんかもそうですけど、横にガッと広がるものってわりと男っぽいというか武骨に見える。それはそれでもちろん好きなんだけど、このブランドの中で表現するときには、そういった要素を前面に押し出すのではなく、少し上品に見えるっていうことが大事で。今回で言えばミリタリーっぽさや太さっていうのはしっかりとありながらも、柔らかさや優しさっていうイメージをパターンの中に入れ込むことで、ちょっとした上品さを作り出しています。   -カラー展開について 木村:2色展開で、ひとつはピスタチオグリーン。前回、mù_lab.でやった同じ形のカーゴパンツ(PLEATED CARGO TROUSERS /...

私物の古着が纏うミリタリーの空気感を取り込みつつ、柔らかく立体的なフォルムへと昇華させた、渾身...

デザイナー木村は10代のころから古着に魅了されてきた。洋服をデザインするようになってからも、ワードローブには常に古着のアイテムがあり、彼が大きな影響を受けたカルチャーとともに、その独創的なクリエイティビティの源泉となっている。 今回のカーゴパンツも、ベースとなったのは木村が長年愛用してきたヴィンテージ。数サイズ大きめを選び、その「太さ」を楽しみながら穿き続けてきた一本だ。そのインスピレーションをもとに、緻密にディテールを設計し、立体的で丸みを帯びたシルエットを作り上げた。 ミリタリーの武骨さを活かしながらも、ヴィンテージのラフさとは一線を画す、どこか上品で柔らかい雰囲気を纏った、まさにmù_らしいカーゴパンツが完成した。   -どんな一着を目指した? 木村:愛用している70年代くらいのフランス軍M64というカーゴパンツは、あえてサイズを数段大きめに選んでいます。その太さがすごく気に入っているんです。ただ、全体的な太さはいいんですが、サイズも大きいから当然太くなくてもいいところに太さが出るんですよね。例えば、ウエストなんかはベルトでかなり絞らないといけなくて、そうするとヒップ周りがきれいに穿けない。これがもう少し上品に穿けたらなと考えました。数字では表せない自然な太さを出すために、生地の分量を360度に分散させて立体的なシルエットを作りました。   -生地のこだわり 木村:上品な雰囲気にしたいからといって、チノ素材やスポーティーな素材にするとどうしてもモードっぽくなってしまう。そもそもイメージしていた形はオーソドックスなカーゴパンツっていうところで、その王道なミリタリーという部分を表現するのに、素材もミリタリーで使われるバックサテンを使いました。   -バックサテンの特徴 木村:光沢があってフラットなサテン地の裏面を使っていて、サテンっていうのは朱子織とも言って、通常のツイルや平織りとは違い、わりと強度もある織り方なんですけど、裏面なので少し節が出るのが特徴で、ミリタリーの素材としてオーソドックス。染めに関しても硫化染料を使っているので、経年変化なんかも含めて、ミリタリーウェアらしい雰囲気が出ると思います。   -生地もデザインも一見すると王道のカーゴパンツということだが、どこで違いを出している? 木村:やっぱり穿いた時のシルエット。まず、太さでいうと今までうちで出してきたどのパンツよりも太くなっています。けど、ただ太いだけじゃなくて、僕がやりたかったのはその太さを360度立体的に逃がしながら、全体的に太いんだけど上品に見えるドレープ感や、生地の流れを表現したかったんです。最近のストリートっぽい作りだと、わざと横に広げてしまったり、横から見たときに極端に太く見えるみたいなのがミリタリーものには多いと思うんですが、それをいかに360度逃がしながら丸みを作り、太さを出していくかっていうところに対して、いろいろな操作をしました。なので、穿いたときに見えるシルエットとしては、どこか一か所で横に広がったり、縦に広がったりというのではなく、全体的に太さを分散させながら柔らかいワイドなシルエットを作っているというのが特徴です。   -そのシルエットを作るためにこだわった部分は? 木村:ウエストにはキックバックの強いゴムを使ったシャーリングを入れてます。ベルトで無理に締めなくてもきれいに収まり、ヒップが美しく見えます。それとカーゴパンツはカーゴポケットが特徴だと思うんですが、このポケットを拠点に生地が固まってしまうというか、ポケットが付いている太ももあたりでどうしても強制的に横に広がってしまいます。そこで、全体的にきれいな丸みを出すために、スリータックを入れているんですが、タック位置を脇に向けて段階的に広がるような入れ方をすることで、ウエストのシャーリングと相まって、ウエストから太ももまでの腰の自然な丸みが生きるように立体的で柔らかなシルエットを作っています。 あとは裾の部分ですね。通常のカーゴパンツだと、裾にドローコードを付けて、それを締めることで強制的な丸みを作るんですが、これは裾から逆方向に向けてタックを入れることによって、裾口は狭いんだけど、自然な形で丸みを帯びながら、柔らかく閉じるようにしています。 ポケットを起点にして、上は柔らかく広げる操作、下は柔らかく絞っていく操作をすることで、全体で見たときに極端に強制的に絞るのではなくて、自然な流れの中で丸みができるよう計算しています。   -丸みにこだわるのは? 木村:自分のモノづくりとして、人間の体の丸みや、体の動きを考えたうえでの着心地というのは重要視しているので、このパンツに限らずこだわっています。このカーゴパンツでいうと、スリータックを入れることで、横軸だけじゃなく、前後の膨らみも出てくるので、360度立体的な太さを表現できていると思います。 カーゴパンツに限らず、ニッカポッカなんかもそうですけど、横にガッと広がるものってわりと男っぽいというか武骨に見える。それはそれでもちろん好きなんだけど、このブランドの中で表現するときには、そういった要素を前面に押し出すのではなく、少し上品に見えるっていうことが大事で。今回で言えばミリタリーっぽさや太さっていうのはしっかりとありながらも、柔らかさや優しさっていうイメージをパターンの中に入れ込むことで、ちょっとした上品さを作り出しています。   -カラー展開について 木村:2色展開で、ひとつはピスタチオグリーン。前回、mù_lab.でやった同じ形のカーゴパンツ(PLEATED CARGO TROUSERS /...

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